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「ポルフィの長い旅」13.5話 その2

 投稿者:はいじま  投稿日:2008年 6月 5日(木)00時23分12秒
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   こんばんは。
 では続きです。誰にでも思い付きそうなネタになってしまっていますが…ちなみに展開上、やむを得ずセーラの年齢を20歳程度ずらしました。設定通り行けばセーラは80歳近くになってしまうんで…それではやはり不自然ですね。

(以下本文)

 今日は救護所での仕事は全部この救援隊がやってくれる。ここにいる難民達…特に子供達は暇になった。大災害を見せつけられた子供達は退屈だからと外を走り回るようなこともせず、ただ救護テントの中で不安に怯えているだけだった。子供達は自然に近い場所に集められていた、それはまるで何かに仕組まれているようだった。
 そこへセーラが現れた。
「あなたたちはお父さんとお母さん、それに親戚や友達を亡くして悲しくて不安なのだと思うわ。私もお父様が亡くなったときのそうだったからあなたたちの気持ちはとてもよく分かるの。私は4歳の時に母を亡くし、10歳の時に父を亡くしたわ。父が亡くなると同時に破産して、私はその時にいた寄宿学校で何不自由ない特別生徒だったのだけど、いきなりボロの服を着せられて下働きをさせられることになったの…」
彼女は独り言のように自分の身の上を語りだした。自分も幼い日に両親を失ったという話と、それによって大金持ちの娘から寄宿学院の下働きへと身分が変化し、苦労させられた話である。
 この話が始まると、ミーナは話を熱心に聞くというよりもセーラをじっと見つめているという様子であった。対するポルフィは最初、無関心を装っていたが話を聞くうちに他の子供達同様に彼女の話に引き込まれていた。
 話は苦労したことばかりでなく、その間に起きた出来事を面白おかしく話して辛い状況の中でも生きて行く術を伝えようとしているようだった。そして下働きだった少女時代の彼女が、自分の部屋に割り当てられた屋根裏で友とパーティをしようとした話になった、そこを宮殿のように見せるために彼女も想像するようにと宮殿の様子を語り、「ベルサイユ宮殿のつもり」に皆を引き込もうとした。
「さあ、みんな想像してご覧なさい。ここはベルサイユ宮殿の大広間なのよ、床にはふかふかの絨毯が敷き詰められている。天井にはシャンデリア、ここは宴会の大広間、私たちは美しい次女なのよ。円天井で吟遊詩人の歌う舞台もあり、樫の木の燃えている大きな炉もある。そして四方にロウソクをともしてキラキラ輝いている…」
「お母さん…」
「母さん…」
ミーナとポルフィがほぼ同時に小さな声を出した。隣にいたザイミスも思わず二人の顔を見た。二人の脳内には、ミーナの誕生日に母が遺跡で語ったあの日の言葉が再生されていた。あの時と語り方が全く同じなのだ。
(想像してご覧なさい。あの石の柱が全部揃っていて、大きな屋根が載っている。神殿や音楽堂、広場に市場まであったの。ここは劇場だったのよ、今ミーナが立っているところが舞台の真ん中。この辺は全部客席。目をつむってご覧なさい、想像して…舞台の周りにはたいまつが焚かれて、眩しいくらいの光が溢れているの。観客席にはたくさんのお客さん…)
 ポルフィの脳の中に、母の記憶が怒濤のごとく流れ込んできた。母の声に姿…ポルフィの記憶の中にある母の感触が急に蘇ってきたのである。ポルフィは下を向いて唇をかみしめ、必死に涙を堪えていた。ミーナも同じように母の感触を思い出していたが、ミーナはただ呆然と語り続けるセーラを見つめるだけだった。
 セーラはセーラで語りながらもこの兄妹に何かしらの変化があったことに気付いていた。でも話を止めるわけにも行かず、気になりつつもどうにも出来なかった。そう言えばバーンズがいつも通りの話をすれば会わせてくれと言い出すと言ったのを思い出した、まるでこうなることが分かっているかのように…今はそれを信じて後で話をしてみようとセーラは考えた。

 ポルフィはミーナの手を引いて教会のドアを叩くと、エレナが対応に出た。
「ポルフィ、ミーナ、どうしたの?」
「セーラさんに会わせて。僕、あの人と話がしたい。」
ポルフィは力強く言った。
「私に何の用かしら…」
セーラが部屋の奥から出てくると、二人はセーラに抱きついた。
「二人とも、どうしたの?」
「そっくりなんだ、そっくりなんだ。母さんに…」
ポルフィが涙声で言い出した。セーラは驚いて自分に抱きつくポルフィの姿を見た。兄妹揃って目に涙を浮かべて、セーラの顔をじっと見ている。
「セーラさん、そっくりなんだ。声が、声が…。声だけじゃないんだ、姿も、臭いも…母さんに。」
セーラは戸惑った。今まで多くの子供達に話をしてきた、その中には自分に礼を言うために抱きついてきたり、母を思い出して抱きつく子供達には何人か遭遇していた。だが「そっくりだ」とまで言われたのは初めてだった。
(この子達のお母さんはそんなに私に似ているのかしら? バーンズ大尉が言っていたのはそういう意味なのかしら?)
「わかったわ、今はあなた達のお母さんだと思っていいのよ。思う存分泣いていいわ。」
 兄妹はセーラの胸の中で、気が済むまで泣いた。

(つづく)

http://haijima-yuki.com/old_anime/index.htm

 
 
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