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「ポルフィの長い旅」13.5話 その1

 投稿者:はいじま  投稿日:2008年 5月31日(土)17時55分32秒
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   丘田けんさま、ここでははじめましてです。
 ひと月ほど前に思いついたお話です。自分のサイトに載せようかとも思いましたが、今回はこちらに投稿させていただきます。
 同じような物語を思い付かれた方は多いと思いますが、ご覧くださいませ。なお、まだ後半が未完成なので、数回に分けて投稿させていただきます。

(以下本文)

 あれから何日が過ぎたのだろう。
 いや、まだ数日と経っていないはずだ。
 でもあの日以前のことが全て夢だったように思える。青い空と遠くに輝く海、緑の山々、山羊の鳴き声、修理工場の油の臭い、何よりも両親の温もりと優しさ、それと修理工場に詰まっていた夢。
 その全てがあの地震をきっかけに消えて無くなってしまった。地震は一瞬で家と工場を奪い、両親を奪い、大切な妹の心さえも奪っていった。
 ポルフィは必死だった、両親を失って表情を失ったミーナを世話するだけではない、赤ん坊を抱えた友ザイミス親子の手伝いに奔走していた。両親の死を悼む余裕もなく、ただただ忙しく時が過ぎていた。
 それでも夜になり辺りが闇に包まれると、彼は両親を失った悲しみと、これからどうなるのかという不安に同時に襲われ、眠れない日々が続いていた。今まで何を考えていたかなんてもう考える余裕もなく、大好きだった自動車に目を奪われることもいつの間にか無くなっていた。

 ある午前のことだった。
 イギリスのある大企業がポルフィ達のいる救護所に救援物資を届けに来たのだ。トラックに一杯の食料や衣類などの物資を積み込み、彼らは物資を届けるだけでなくテントを張り直したり、難民達が使っていた毛布を洗濯したりという活動を展開した。この人々は日替わりで救護所を周り、ここで一泊して翌日には別の救護所へ行くという。
 その救援隊を陣頭指揮する一人の女性がいた。もう60歳近い年頃の女性だが、端正な顔立ちに年齢を感じさせない黒髪が印象的だった。指示を出す声も歳を感じさせないほど美しく透き通った声で、その声には世の中の何もかもを知っているような威厳もあった。
話によるとその女性はその企業の先代の経営者だという。人々の噂話ではインドの大鉱山の経営に成功し、その資金でイギリス本国に戻って学校経営事業を興したという。そしてこのような災害や戦争で多くの子供が親を失ったと知ると、いてもたってもいられずにすぐに救援活動を行うのだという。さすがに大戦中はその活動も限定的だったらしいが、それでも行ける範囲の場所で救援活動を行い、人々、特に子供達に勇気と力を与えてきたのだという。

 そんな彼女をポルフィはあまり歓迎していなかった。「どうせ金持ちのお恵みだろ」と冷めた目で見ていたのだ。彼女を最初に見たとき、まさかこの女性が自分にとって重大な決意をさせる人物になるとは思っていない。

 この救援隊を見て明らかに変化があったのはミーナの方だった。昼食を配膳するこの女性をじっと見つめるようになっていたのだ。ポルフィはこの変化に気付かず、ミーナの分の昼食を持って来て
「ほら、昼ご飯だよ、一緒に向こうで食べよう。」
と声を掛けた。だがミーナは無言のまま、昼食を配膳する彼女をじっと見つめたまま動こうとしない。その表情も両親の死を知って以降の無表情ではなく、何か無くした物を探しているような表情に変わっていた。
「どうしたんだよ? なんか今日のミーナおかしいぞ。じゃあここで食べようか。」
優しく声を掛けると、ミーナはその場に腰を下ろして食事を受け取った。だが彼女の方から視線を逸らそうとしない。
 昼食の配膳作業が終わると彼女の姿は教会の中に消えてしまった。ミーナはそれを追いかけようとしたのか立ち上がった。
「お前どうしたんだ? あの人が気になるのか?」
ポルフィは声を掛けたが、ミーナは無表情に戻ってそのまま座り込んでしまった。

 教会の中ではその女性がバーンズ大尉と親しく話をしていた。
「今回もすぐ飛んでくると思いましたよ。お久しぶりですね。」
「バーンズ大尉こそ、ここでの救護活動では米軍の中で一番乗りだったそうじゃないですか。」
「いや、今回は被災地にちょっと気になる人たちがいるのでね。私も熱くなって上司に早く行かせろとせがんだのですよ。一緒に活動するのはギリシャ内戦の時以来だね。」
「そうですわ、大尉は軍人よりも別の仕事をされた方がお似合いだとあの時は思いましたが、今はその気持ちがいっそう強くなりましたわ。」
「ハハハハ、私はこの通り根っからの軍人ですよ。でも今回だけはどうしても気になる子がおりましてね…かなり私情も入ってますよ。」
「大尉のそんなところが軍人に向かないのですよ。ところで気になる子って、娘さんの友達でもいたのですか?」
「いや、こっちへ来て知り合った子なのですが。我が部隊の指定自動車修理工場になってもらっている家の子なのです。パタゴスさんと言うのですが…残念ながらそのパタゴスさんと奥さんは亡くなってしまって、子供さんだけが助かったのだが…」
「まぁ…」
「その子供さんが兄と妹の二人姉弟なんです。兄は両親の死を受けて入れて涙も見せずに頑張っているのですが、妹の方があの地震で両親の死を知って以降…表情もなくなって何もしゃべらなくなってしまったのですよ。」
「それはいけないわ。でも私には何もできませんわ。」
「いや、あなたの声を聞かせるだけであの二人は変わるんじゃないかと期待しているのですよ。」
「でも私はその子達のこと知りませんし、何しろ他の子の事も考えないと…」
「いや、あの兄妹…ポルフィとミーナって言うのですが、多分いつものようにあなたが身の上の話をしたら、あなたに会わせてくれって言いますよ、その時は相手してやって欲しいってそれだけです。」
「意味が分かりませんわ。」
「とにかくその時はお願いします。ではいつものようにやってください。私もあなたの話が大好きで早く聞きたいですよ、セーラさん。」

(つづく)

http://haijima-yuki.com/old_anime/index.htm

 
    (丘田けん) はいじま様
ご投稿ありがとうございます。
大地震に見舞われた兄妹二人、あまりにも過
酷な人生の試練がポルフィたちを襲いました。
うちひしがれているそんな二人に救世主さっ
そうと登場!?
可憐なお嬢さまの晩年を描いてくださった、
はいじま様の注目すべき今作品。
第二話以降も絶対目が離せません。
 
 
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