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風のむた小田に寄せくる稲波のたをやかなれや秋は来にける
戻らざる時の深淵いかほどかDNAの鑑定をもて
たけそかに花とやいかに聞くならく奈落知るまじ君が正香に
うきゆゑに晴れ間の知らぬひとなれや降れる涙とみれば哀しも
稲田にてお玉杓子を見つくればそに膝をりてしばしたはむる
今はなき栗畠なれや六軒の長屋づくりにそよぐ松風
もみぢばの移ろふ影や栗食めばありしながらを偲はゆるかも
麦笛をぴぴと吹きつる少年の背をつつみぬくれなゐの鄙
万緑は口笛ふきにとけてゆくちりんちりんと風にゆれつつ
梅が香の一輪ほどの春べなり心もしのに雪降らばなほ
月舟を愛づる蛙の鳴きごゑの満つるほとりや朧月夜に
雨降れば川の瀬音ぞまさりける心立てだに温泉郷に
谷川俊太郎 『春に』より、詩の一部を引用して
なんだろうこの気持ちとは
大地より足をつたわり
腹へ胸へと
よろこびはかなしみにふれ
いらだちはやすらぎにふれる
こころごころに
さけぼうよ
声にならないこの気持ち
こぶし突き上げ岸の向こうへ
◆ ◆ ◆
明日葉のみづみづしさよ摘まるるも朝にいづる青葉まばゆし
冬草のなぜに離れゆく定めやも美しき旅人へ和歌の浦風
かすみ立つ春の山ろに忍び咲く菫のやうに約しからまし
貝殻に耳を澄ませば白波の打ち薫る磯を思ひづるなり
信濃路は花も香れば冬の間の夕晴れ丘も名は恥のなし しなのぢは はなもかをれば ふゆのまの ゆふばれをかも なははぢのなし
あな早も 田の上に満つる 水面には まだ見ぬ夏に
早乙女は 裳裾濡らしつ 玉苗を 植うる気色も
田植歌 さえも聞こゆる までに里廻は
渡らるる川面に響む汽笛やも坐せ星河へ天の磐船
花の雪降りしく径をそそしかり歩く雉子にこころ和ぐかも
仮装やも母堂に添うて入園の子らは浮かれつ花の衣も
仮装やも花の衣も添うて子も花の賀となす入園ならば
春の川花の色添へ流れゆく今を昔になすよしもがな
ひさかたの光こぼれぬこの島の鳴きあふ鳥の調べ優しき
書の道をふみもせざれど水茎の行くへも知らぬ男女川やも
書の道をふみもせざれど細波やむときもなき男女川やも
瞼はとろとろ閉ぢてゆきにけり夜の静寂に誘はるるまま
満天の星をいただく静寂さへ見えぬは今宵の花雲かも
満天は星を抱かむ今まさに見えぬは人の情なりけり
はくれんに罪はなかれど隣より落つる花殻はくを憐れむ
小鳥なす白木蓮はひさかたの雲居を愛しみ羽ばたきにけり
今しがた月は左に見しかども今し右に見ゆる道すがら
七厘も今は昔となりにけり裏の廃寺の秋の夕暮れ
往年のジェットストリームのナレーションより引用して下記四首をよめる
満天の星をいただく果てしなき静寂に流れゆくはかなしも 草庵
音楽の夜間飛行の翼から彼方の夢に熔けてゆきつつ 草庵
深々とした夜の闇に心葉をゆだね過ぎゆく時は饒舌 草庵
満天に煌く星のいとなみも聴こゆるまでに閉づる瞼 草庵
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